美容師の教育カリキュラムとLTV
こんにちは関山です。
先日アシスタントの森谷悠斗が入社し、SOCOのアシスタント教育カリキュラムができあがりつつあります。
レッスンは週2回。スタイリストになるまでの期間は、新卒の場合約2年半〜3年弱を予定しています。
流れとしては、
掃除・受付・電話対応・シャンプー・トリートメント・ヘッドスパ(約3ヶ月)
カラー(約2〜3ヶ月)
ブロー(約1ヶ月)
パーマ(約2〜3ヶ月)
カット(ウイッグ半年・モデル1年。約1年半)
これより長くなるか、短くなるかは本人の才能と努力次第です。
お店によってスタイリストになるまでの期間には差があります。早くて1〜2年とか、長くて10年とか。
僕の考えとしては、市場のニーズに応えられるテクニックを最短で学び、1日も早くスタイリストになってもらいたいと思っています。可能であれば1年でスタイリストになっても構わない。
自分がアシスタントの時に一番疑問に思っていたことは「この技術は今後役にたつんだろうか?」とか「もっと合理的にできないだろうか?」ということです。
例えば、昔働いていたお店ではブローチェックに合格するのに1年くらいかかりました。
ブローのチェック項目の中に、ショートレイヤーベースのウイッグを小さいロールブラシですべてリバースに流すような昔ながらのスタイルがありました。超こまかい精度で完成させなければいけないのですが、一週間に一度チェックがあって、スタイリスト全員から合格の判定をもらわないと合格できない。落ちたら次のチェックは1週間後。
これを学んだことにより技術の引き出しは増えたわけですが、今役に立っているかというとそうでもなかったりします。なにせそういったスタイルをやりたがる人自体がいないのですから。
他にも疑問だったのが、国家試験のフィンガーウェーブ。
オールパーパスは現場に入っても必ず使うのでいいと思うのですが、フィンガーウェーブは、ヘアメイクの領域じゃないと現場で使っているところを見たことがありません。
なぜあれを今だにやっているのか純粋に疑問です。
もちろん、技術は点ではなく線で結びついているのだから綜合的な観点から見れば必要である。と言われればその通りです。幅広い技術が扱える方が材料としてプラスになることは言うまでもありません。ただ、技術を取得するために消費する時間と、習得後に得られる効果を天秤にかけた時にペイできるか否かで、合理的に判断すべきです。
「綜合的」という点でいうと、あまり効果を期待できない技術領域に消費する時間分、写真を撮ってみたり、映画を観たり、本を読んだりした方がよっぽど有効かもしれない。
他にも「時間がかかっても苦労して細かく100%完璧な技術を習得するプロセスに価値があるんだ。オレ(わたし)もそうやって苦労して学んできたし、そのおかげで今のオレ(わたし)がある」という考え方もあるでしょう。
それもその通りかもしれません。でも、自身を相対的に見ることができて、慢心しない賢さがあれば、アシスタント時代はもちろん、スタイリストになってからも自分で考えどんどん学んでいくことはできる。むしろそれができるのは当たり前で、できないのであれば時代から取り残されて美容師としてお客様から必要とされなくなるだけです。
自身の価値を定義するのは「主体的に考えることができる」とか「継続して努力することができる」であるとかの総合的な人間性であり、人間性の幹から枝葉のように伸びてくるのが技術です。技術は個人の価値におけるツールの一部でしかありません。
マーケティング用語でLVT(ライフタイムバリュー)という言葉があります。
ざっくりいうと、立ち上がったサービスが、始点から終点までにどれくらい企業に利益をもたらすか。そこにどれくらいの経営資源や時間を投じるかという概念です。
以前ブログでこういったことを書きました→美容師の寿命は長くない
異論反論あるでしょうし、統計を取ったわけではないので個人の私感ではありますが、プレイヤーとしての美容師のピークは一部のスター美容師を除き、平均値でスタイリストになって2年後くらいからから長くても30代中盤くらいまでだと思っています。
すごく短いその時期に、どれくらい経験を積みお客様から指示を得るかで美容師としての人生設計が変わってくる。それをLTVで考えると、資源としての「時間」という尺度はもっとも重要です。
(※ここで述べているのはプレイヤーとしてのLTVのことです。マネジメント側として求められる能力はプレイヤーより長期的LTVであり、別)
そういった観点から考えても、かなりの時間をかけて偏執狂的にLTVの効果が薄そうな技術習得にこだわるよりも、現在進行形の技術をスピード感と平行感をもって学んだ方が、本人にとっても、組織にとっても生産的ではないだろうか。というのが僕の考えです。
「今までそうやってきたし、自分もそう教わってきたからこれからもそうするべきだ」というのは教育側の盲信です。
市場のニーズは常に移り替わっていくのだから、必要な技術や考え方も刷新していかなくてはいけない。
現在進行形で「使える技術」を効果的に習得するためのプロセスを考え、素早く学習できる教育カリキュラムを作る。
それが教育する側の責務であり、最短で習得すべく努力するのが教わる側の責務です。
やるべきことを効率的にやって、賢く目標に達する。ということがSOCOにおける技術教育の考えです。
関山