美容業界の教育は時代遅れ?「弱み」を改善するより「強み」にフォーカスを当てよう
こんにちは関山です。
みなさん、就職してから今までどんな教育を受けてきましたか?
4月から新卒で入社した方の中には「仕事辞めたいな」と思っている人もいるかと思います。
かつての僕もそうで、一番初めに入った会社は数ヶ月で辞めました。
会社の体制や教育制度、もしくは尊敬できる先輩が誰もいないなどの理由であればスパッと辞めて次を目指すことをオススメします。
あまり良くない環境や、理解のない上司に無駄な時間を割くより、自分の人生を生きましょう。
辞めたい理由が自分の能力不足・なまけ・主観であれば、辞めて別のところに就職をしても同じことを繰り返すだけなので転職しても何も変わりません。
今の会社でそれなりにスキルを積まないとその先もないと思った方が現実的でしょう。
自分を客観的にかえりみる視点を獲得することをオススメします。
【この記事を読んで理解できること】
・教育の視点が変わる
・美容業界の教育がなぜ遅れているのかがわかる
・「弱み」を改善するより「強み」を伸ばした方がうまくいく理由がわかる
【弱みを改善することはコスパが悪い?】
タイトルにある通り、個人的には、弱みを改善することにフォーカスを当てることはコスパが悪いと思っています。
誤解を招きそうなので、もう少し説明すると「強みを伸ばすことに比べて」という前提で。です。
例えばあなたが新入社員として、美容室に入ったとしましょう。
入るとまず、その会社の業務に必要な基本的なアレコレを叩き込まれます。
例えば、ホウレンソウ(報告・連絡・相談)とか、社会人としてのマナーとか、その会社で必要とされる基本的モラルなどです。
SOCO/AO/SUNでももちろんあります。
そういった基礎スキルがないと通常業務に大きな支障をきたすからです。
2年目以降の先輩はわかるかと思いますが、基礎研修をやっていると、その段階ですでに個人差があることに気づきます。
人によって「できる」「できない」が入社直後からけっこう現れてくるのです。
あ、この人は仕事できるなとか、仕事できないな。という事実です。
また、その中でも様々なタイプがあることにも気づくでしょう。
例えば、
・理解は早いけど雑
・接客はメッチャ上手いのに、掃除片付けが下手くそ
・人としていい奴だけど、仕事ができない
・仕事はできるけど人格に難アリ
などなど。
上記4つの例の文中で、左が「強み」の可能性があって、右が「弱み」の可能性があります。
強み=「理解が早い」弱み=「雑」
という具合です。
【日本人は弱み改善が得意】
そこで先輩の皆さんがやるべきは、後輩の弱みの部分を「最低でも平均」まで上げることです。
そうしないと、仕事が円滑に回らないし、クレームに繋がりかねない。
これは仕事における最低条件なので、どこでもやるでしょう。
そしてその後も、弱みを改善するための細かい指導が続きます。
こうして日々、スキルを上げ、業務改善していくわけです。
上記は「弱み」の改善方法です。弱み改善において日本は大変優秀です。
細かいサービスや気配りができる。「おもてなし」精神の国です。
また、美容業界はサービス業の中でも最もサービス業的側面が顕著な業種なので、昔から細かい点を改善することに長けています。
では、弱みの改善は得意だとして、「強み」にフォーカスを当てているところはどれくらいあるでしょうか?
【美容業界の教育方法は遅れている?】
美容師は技術職なので、職人としての文脈が色濃く残っています。
僕が受けてきた教育は、先輩が絶対で、先輩のやり方を「受け継ぐ」といった感じでした。
アシスタント時代に褒められた記憶があまりありません。
かつて色々なサロンで働いてきましたが(6〜7サロンくらい)
ほぼ全てのサロンが「弱みを指摘する」教育方法でした。
レッスンの進行にも疑問がありました。おおよそ現代で使わないような技術がたくさんカリキュラムに組まれていました。そのせいでスタイリストになるまでにすごく時間がかかる。
「これをやることに何の意味があるのだろうか?」と疑問を持っていました。
もちろんそれを指摘できるような空気感ではなかったし、意味がまったくないとは言えないのですが、時間とリターンを考えた時にあまり有益ではないのではないか?と感じていました。
他にも業界の様々なやり方に疑問を抱いて僕はアシスタント時代を過ごしてきました。
【感覚の差は世代間格差】
例えば20歳で美容室に就職したとします。そして美容室の経営者が40歳だとします。
そうすると20年の歳の差があります。
もし、経営者の教育方針や考え方が、その経営者が独立前に受けてきた教育のまま変わっていなければ、20年前どころか、経営者がアシスタントだった時に受けてきた30〜40年前をベースとした教育方法や価値観のままの可能性があります。
20年あれば社会は相当変わっています。
40年あれば社会は2、3回転しています。
このことからわかるように、40歳の経営者と20歳の新人の価値観にはかなりの開きがあるでしょう。ジェネレーションギャップというやつです。
もちろん会社ごとに世代間のギャップを調整しながら、時代とともに教育や会社の方針を更新することはやっているでしょう。
しかし、我々の業界は職人としての感覚が色濃く残っており、なかなか大きく変えることができていないような気がします。
旧世代のやり方が現代でまともに機能するでしょうか?
ここに問題点があると考えます。
【強みを伸ばすことはなぜコスパがいいのか?】
僕はアシスタント時代に「弱みを指摘して直す」教育を受けてきました。
しかし、先ほど述べたとおり、そのやり方に疑問を感じていました。
もっと合理的にやれるやり方はないのだろうか?と。
そこで思いついたのが、強みを発見し、伸ばす方法です。
「弱みを指摘して直すことはすごく重要。でも時間がかかる。でも強みにフォーカスを当てたらもっと。。?」そう考えました。
【強みを伸ばすメリット】
強みにフォーカスすると以下のメリットがあります。
・本人のやる気が湧く
・本人が自分の強みを認識できるようになる。
・本人が自分の能力に対して確信を持てるようになる。
・自発的にどんどん努力するようになる。
などです。
【スタッフの「強み」を伸ばすためにやってきたこと】
僕が独立してから、スタッフの「強み」を伸ばすためにやってきたことを具体的に書いていきます。
僕がやってきたことは、
『なにもありません』
「は?」
と思うかもしれませんが、ほんとになにもしていません。
そもそも僕は教育に関わっていません。
僕がやってきたのは会社全体の方向性を決めることだけです。
もしやってきたことがあるとすれば、本人の「強み」を発見した時に
「ここの領域凄く能力高いよね」
とか
「めっちゃいいじゃん」
とかのコメントをするだけです。
それだけで人は自分で考えて行動するようになります。
強みを引き出すために重要なのは
自分の能力に気づいてもらうこと。
これだけです。
SOCO/AO/SUNの各店トップ、松尾、菅原、杉本に対しても、技術とか接客に関してあまり細かく指摘したり、怒った記憶はありません。(店舗マネジメントに関しては別ですが)
3人とも元々能力があったのに、弱みを指摘する教育を受けてきたから、前の店ではあまり結果を出せていませんでした。
「強み」にフォーカスを当てるだけで、あっという間に本来の能力を発揮して結果を出していきました。
強みを引き出すためのより具体的な方法論を知りたい方は
ケン・ブランチャード
「1分間 エンパワーメント」
を読むといいでしょう。
【強みにも色々ある 僕の場合】
僕自身の「強み」は「論理的思考能力」です。
物事を論理的に考えることができる能力のことです。
しかし、僕がアシスタント時代やスタイリストになってからも、自分の能力に関して褒めてもらった記憶はありません。
むしろ「お前美容師じゃなく、評論家とかになった方がいいんじゃない?」とディスられていました(泣。
僕の書いたブログを読めばわかるかと思いますが、僕の論理的能力が会社の発展に大きく関係していることはわかるでしょう。
もちろん美容室で論理的思考能力が必要という定義は難しいと思います。
しかし、今の時代何が化けるか全く予想できない時代です。
普通の会社だと適応できそうにないような人がyoutubeとかでたくさん稼いでいる。
可能性を狭めてはいけません。
【強みを発見するためには?】
強みを発見するポイントとしては、
・ 人の強みを発見する意識を普段から持つ
・ 強みを発見したら素直に褒める習慣を持つ
・ 強み自体が、本人も自覚していて、かつ誰から見ても客観的事実であること。
あたりでしょうか。
で、「強み」といわれると、美容師だと技術とか接客とか、ついつい自分の職業に当てはめて考えてしまいがちですが、視点を広げるといくらでもあります。
例えば、僕のような論理的思考能力でもいいし、PCなどを使えるスキルでもいいし、事務処理が早い・確実とか、誠実であるとか、スタッフ間のコミュニケーション能力が高いとか、その人がいるだけで雰囲気が明るくなるとか。
なんでもいいです。
そして、強みを伝えつつ、本人が伸び悩んでるなど、必要な場合があればアドバイスを添えましょう。
あくまで軽くです。あとは本人に任せましょう。
【強みにフォーカスを当てるデメリットは?】
基本的にはないと思っています。
ですが、あるとすれば「勘違いする」人がでてくる。
というところでしょうか。
僕の経験だと、言い方が悪くて申し訳ないのですが「能力の低い人ほど勘違いしやすい傾向にある」と思います。
能力がある人は自分を客観的に見れているので、自己責任感が強い。
なので、強みを褒めると、どんどん正しい方向に伸びていきます。
しかし、能力の低い人や、客観的に自分を見れない人は勘違いしてしまう傾向にあります。調子に乗ってしまう。
ここのさじ加減は難しいのですが、基本的には「性善説」(人間は生まれながらに良い生き物であるということ)に立って教育する方が全体のパフォーマンスは高いと思っています。
美容業界の教育は基本的に「性悪説」(人間は生まれながらに悪い生き物であるということ)からスタートしているので、弱みを徹底的に正す教育になっている気がします。
勘違いする人が出てきた場合でも、ある程度泳がせておけばいいでしょう。
その時は勘違いしてても、何かのタイミングで自ら正す可能性はあります。
むしろ自分で気づかないと本質的な解決にはなりません。
しかし、あまりに問題がある場合や、根本的な人格の問題でこの先も治らないな。って場合は、大ナタを振るうカードは用意しておきましょう。
この部分を掘り下げると、採用の段階から考える必要があるのですが、長くなるので今回は述べません。
一つだけ本質を述べておくと、ウチの採用基準の最も重要な要素が「人間性」となっているのは性悪説からスタートする組織にさせたくないという理由があるからです。
【まとめ】
以上、僕が考える「弱み」を頑張って改善するより「強み」にフォーカスを当てるべき理由でした。
ウチが中途採用で業績を伸ばしてこれた理由は上記述べた通り、強みにフォーカスを当ててきたことにあります。
中途採用のスタッフは他サロンのやり方を見ているので、比較対象があり、客観的にウチのやり方の優劣を判断できます。
しかし、今後新卒のスタッフが増え、比較対象がない状態だと、ウチのやり方がその人にとってのスタンダードとなります。
そのなかである程度の厳しさがないとまとまらない。という視点もあるでしょう。
その通り。そういった状況になれば強みを伸ばすやり方は機能しなくなります。
我々は「自由」と「自律」という会社理念を設定しています。
自由を望むのであれば自律してくださいね。と。
会社としては強みにフォーカスを当てる方針で今後もやっていけることを願っています。
関山