6年経営してみてわかったこと。〜会社の拡大と働く人の幸せは比例しない〜
我々の業界における会社の成長を測る指標として売上・店舗数・スタッフ数があります。
美容室経営者は常にこの数値と向き合い、伸ばすために日々サロンを経営していくことになります。
そして、基本的にこの指標から逃れることはできません。
今回は会社を伸ばした先に何があるのか、について。
成功とされているものとそうでないもの。それぞれを分ける境界線とは何か?
自分が6年経営してきた経験も踏まえ考えてみたいと思います。
【成長の先にあるもの】
代官山にSOCOをオープンしてから6年
創業から4年でSOCO/AO/SUN/ACAと4店舗。スタッフ数約40人。
業界では比較的早いスピードで成長してきました。
その後コロナになり2年。その間は店舗数スタッフ数共に頭打ちとなりました。
この6年で、4年の急速な成長期と2年の停滞期を経験したことになります。
冒頭から結論を述べますが、自分の実体験と照らし合わせても、スタッフの幸せと会社の拡大は比例しません。
むしろ無理に増やすと幸せの尺度は下がります。
今ではそう思います。ただ、店舗を増やすことに躍起になっていた時期はそう思いませんでした。
「限界がきたら、限界を超えてやっていこう」そんなテンションでやっていました。
「早く伸ばしたい病」
創業当初はとにかく最短で結果を出したいという想いが強くありました。
美容室経営者で自分より結果を出している人を見ては「自分はまだまだだ」「もっと結果を出さなくては」そんな焦りがありました。
店舗を増やすためにお金を借りて、スタッフを採用し、マーケティングに力を入れ、実力以上に背伸びをして駆け抜けてきました。
出店など、大きなキャッシュアウト直後は危うくキャッシュが尽きるかも、という場面も数回ありました。
今思い返してもよくやってこれたな、と思うくらいの綱渡りをしながら進んできた。でも、結果的に会社は勢いよく成長しました。
それはそれで達成感がありましたが、大きくリスクを取っていた分、いつも不安と隣り合わせでした。
【やれることは増えたが、問題も増えた】
会社が大きくなるにつれやれることが増えていきました。
出店も、採用も、物件契約も。実績があると、多くのことがスムーズに、より有利に進めることができるようになります。
また、結果が出ていると、外部から褒めていただくことも増えて、それはそれで誇らしい。
店舗数、スタッフ数、月商、年商。
数字を追いかけ、創業からの4年は前年度に対して200%以上の売上成長を毎年達成してきました。
成長を達成するために、さまざまなものを管理・分析し、多くの時間を費やし仕事と向き合いました。
内装、HPデザイン、グラフィックデザイン、資金調達、会計、労務、サロンワークetc...やれることはだいたい自分でやってきました。
結果は出て店舗数スタッフ数共に増えましたが、同時に、とても空虚な気持ちにもなっていきました。
スタッフが増えるにつれ、一人一人とコミュニケーションを取れる機会も減ったし、誰かが入社したり退社したりもいつしか業務的な流れの中に組み込まれるようになっていった。
プライベートでは自分自身の生活水準は上がり、それなりにお金をかけて豊かなこともできるようになりました。が、そこに満たされるものは何もありませんでした。
色が薄まる。熱くなれない。密度が減っていく。
そうすると「俺は何のために仕事をやってるんだろう?」というありきたりといえばありきたりな空虚な穴がぽっかりと空いてきます。
何かを達成するにつれ、何かが失われていく。そんな感覚です。
会社を伸ばすのは、お金のためか?名誉のためか?自己顕示欲のためか?
できる経営者はそんなことに囚われず、さらなる仕組み化を推し進め、システマチックに機能する組織を作りにいくのでしょう。
自分はいかに情熱を燃やせるかとか、幸せの定義とか、人生の目的とか、哲学的にめんどくさいことを考えてしまうタイプなので、単純に結果が出てハッピーとはなりませんでした。
「自分でどうにかするというエゴ」
会社が拡大していた4年の中で、自分が頑張ればどうにかなるし、結果も出せる、という自負がありました。
そして、その実績にスタッフもついてきてくれているから、伸ばし続けなくてはいけないんだ、と。
売上も、店舗も、スタッフ数も。拡大を続けることが会社にとっての正義であり、社会的意義である。そして、最終的には自分が頑張ればどうにかなる。そう考え組織を動かしてきました。
もちろん組織というのはチームで進める仕事ですから、そんなわけはないんです。自分だけが頑張ってどうにかなるものではない。
今思うと、とても傲慢な考え方をしていたわけですが、当時は気づくことすらしませんでした。
会社が上昇基調にある時は、多少不具合があっても不自然さを誤魔化せるくらい組織全体にアドレナリンが出ていて、実際何とかなったりします。
でも今回のコロナのように、社会全体に大きな影響が出たりして、上昇基調を描けなくなった時に、成長だけを目標としてやっていた場合、むしろ何をしても逆回転していくような現象に陥ります。
【成功の定義】
冒頭で述べたとおり、スタッフの幸せと会社の拡大は比例しない。というのが僕が6年間美容室経営をしてきて感じた率直な感想であり実感です。
売上やスタッフ数、店舗展開は重要な指標ではありますが、全てではありません。
何をもって「結果を出している」「成功している」かは、それぞれの会社や働く人の考え方によります。
店舗やスタッフが増えていなくても、働いている人がやりがいを持って働けていて、目の前のお客様を幸せにすることができているのであれば、それは一つの結果であり成功の形です。
逆に店舗やスタッフ数が増えていても、成長に比例して問題が増加し、スタッフがやりがいを持って働けていないなら、それは経営者にとっての成功と言えるかもしれませんが、スタッフの成功とは言えないのかもしれません。
今述べた前提があったうえで、ですが。今後また結果を出すために戦っていきたいと思っています。
「会社の拡大とスタッフの幸せは比例しないんじゃないのかよ」というツッコミが入りそうですが、世の中には、会社が大きくなっても、ちゃんと両立している組織はあります。
どのようにしたら両立できるのか?
それはきっと、組織の成長とスタッフの幸せが同じ方向を向いている時にはじめて達成できるはずです。
【会社の拡大と働く人の幸せは比例しない】というタイトルでこのブログを書き始めましたが、僕が6年経営してきてようやく理解できたことはこのタイトルのまんまのことです。
基本的に会社の拡大と働く人の幸せは比例しない。
では、拡大と幸せが比例しないのであれば、どうやって両立させていくか?
これが今後数年向き合うべき課題になります。
「会社の成長とスタッフの幸せの両立」
言葉にすると簡単ですが、実際にやるとなるとあまりに達成難度が高い。これが「経営」というものが難しいとされている本質の一つだと思います。
この簡単そうでいて難解な命題と向き合うこと。
それは熱意を持って取り組むに値する重要なテーマだと思っています。
【最後に】
人がネガティブな発想になるタイミングは情熱を燃やせる対象を失った時です。
その一つに昨今のコロナがありました。
コロナ以降、「できること」「できないこと」両方を突きつけられた2年でした。
特にリアルの商売に大きな影響を与え、影を落としました。
経営が立ち行かなくなったり、心が折れて事業を畳んでしまった飲食店や美容室経営者の方もたくさんいるでしょう。
しかし、徐々に終焉に向かいつつある今、社会も人も再び動き出さなくてはいけません。
今回書き連ねたのは自らの過去の反省を含んだ現時点での所感です。
過去から学ばないと人は成長しない。過去の栄光を引きずってもその先に発展はない。
再びスタッフと共に学び、情熱を燃やして仕事へと向かうこと。
個人的な過去の反省も含んだ感情の吐露をもって、今後に向けての決意表明とさせてください。
関山