【年の瀬・現場の重要性】


 


この時期になると毎年ブログを書いている記憶があります。


年末は1年を締めくくるために考えをまとめておきたいと思うからでしょう。


この1年、正直僕の中でたくさんのやれていないことがありました。


特に現場に立つことが減ってからは、自分が何をすべきなのかがよくわからなくなっていました。



1店舗から2店舗。3店舗から4店舗。さらには別事業。


店舗が増え、事業領域が拡大し、全てに目が行き届かせることが物理的に難しくなってからは、現場から離れ、どう仕組み化するかが自分の中での経営的なテーマとなりました。



・自分が現場にいることで、みんなが自ら考えるべき領域を阻害してはいないか?


・お店に立たないほうがスタッフそれぞれ能動的な考えのもと仕事を進めていってくれるはずだ。


・仕組み化を達成するために、指示を出すことは減らし、店舗に任せよう。


・店に顔を出すことはなるべく控えて自宅でリモートワーク。



この1年は、これらを推し進めることが「仕組み化」と考え、実践してきました。



しかし、それらは誤りであることに気づかされることになった1年でした。



当たり前といえば当たり前なのですが、上記のようなテーマが機能するのは、そもそも経営方針がしっかり提示されている前提で、です。


「任せる」といえば聞こえはいいですが、実際僕がやってきたことは「放任」であって、ただ単純に自分がやりたくないことを都合よく解釈して現場に押し付けていただったのです。


そんな状況で組織がうまく機能するわけがありません。


むしろ混乱を招きます。


自分はそんな当たり前のことすら気づけていませんでした。



A.仕組み化を進めるために経営者が現場から離れる必要がある。


B.経営方針を明確に提示するために経営者が現場を隅々まで把握している必要がある。



上記A.B.2つはそれぞれ相反する命題を抱えています。


アホな経営者である自分は、こんな単純な矛盾に気づかないまま「仕組み化」「経営合理化」の旗振りのもと、【A.】だけをこの1年やってきました。



そして、全然うまくいきませんでした。



そんな反省もあって、最近はずっと現場にいます。


その中で、改めて美容師・美容室にとって、現場というのは圧倒的な意味を持つものだと再認識しています。





【現場に立って見えてくるもの】


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先月くらいから、毎日現場(店舗)にいて、やることがあまりなくても店にいるし、忙しい状況になればスタッフのヘルプに入ったり受付をやったりしています。


正直みんなにとってはやりにくいでしょうが、ごめんねと思いながらも店舗に居座っています。



現場にいることでお店のあれやこれやが見えてきます。


「カウンセリングはこうしているんだ」とか「フロアが盛り上がってるな、沈んでるな」「仕上がり上手だな」「掃除が行き届いていないな」「店販おすすめしてるな」「次回来店のお伝えしてるな」とか。


その他にも無数に気づくことが出てきます。


気づくことが増えるということは、「スタッフのここを褒めたいな」と思うことも増えるし、「ここもっと伸ばせそうだな」とか「改善しなくてはいけないな」と思うことも増えます。


さらにはこのスタッフとこのスタッフが仲良いなとか、いつもテンション高くていいね。とか、気分が落ち込んでるスタッフがいるな。とかも見えてきます。


そういった現在進行形のディテールの端々まで捉えておかないと、適切な運営方針など立てることができるわけがありません。


そんな基本的なことも忘れて「今すぐ仕組み化!」みたいな、短期的に伸びた成り上がり社長が自己啓発本で言いだしそうなやり方を実践しようとしていた自分はあまりにアホでした。


本当に優秀な経営者というのはそういった問題点を容易に解消し、仕組み化していくのだと思います。


でも、自分にそのような能力はないし、ウチには向いてないな。と、この短期間ではっきり理解しました。





【現場から考える】


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現在4店舗の美容室を運営していて、40名ほどのスタッフがいます。


これくらいの人数と店舗数になると物理的にすべてに目を行き届かせることは難しくなります。


しかし、できる限りにおいて、それぞれスタッフの生の声や心情のディテールみたいなものを把握しておかないと適切な意思決定をすることはできません。


特にウチみたいに一人一人の色が濃く、それぞれの個性を引き出して結果を出すことに重きを置いている組織はなおさらです。


そもそも「仕組み化すること自体が不可能である」ということを理解しなくてはいけない。



何かを考えるためにはまずもって現場からであって、情報だけ把握しておけば適切な判断ができるというのは机上の空論です。



経営者の仕事というのは「考え、実行すること」です。


「考えること」というのは、本来経営者が最優先でやらなくてはいけない行為であり「実行」するためのヒントや答えを導きだすために積極的に現場に立ち、現場から学ばなくてはなりません。


当事者視点で現場を見て、詳細を把握し、会社、店舗、スタッフ。3方向を伸ばすための方針を提示できないのであれば経営者である意味はない。


ファクトとエビデンスの二刀流でスマートに推し進めるマーケティングや経営手法が世の中で流行っていますが、それだけでは見えてこない現場のドロドロしたリアルな姿。


そういった一見非合理的なものに価値がある世界。それこそが美容室という事業だと、今になって改めて感じています。




【まとめ】


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おおよそ今年1年の振り返りと反省を含め、最も大きな気づきは「現場回帰」この一言に尽きます。


「美容室経営は現場がすべて」


こんなこと書くと「は?今更?」と思われるかもしれませんが、自分はそんな当たり前のことすらちゃんとわかってなかったのです。


「ちょっと視察しましょう」ではダメで、ガッツリその場にビタ付けして現場視点から物事を捉えていないと「答え」どころか「ヒント」すら見えてこない。


それが美容室経営の難しさ。



合理的なものだけでは片付けられない。


アホになってはいけない、アホにならないといけない。


「技術」も、「経営」も、「美しさ」も同じ。


「論理化」「言語化」「体系化」できないからこそ、突き詰めた職人の世界。


甘い幻想を捨てること。


真面目に、実直に。捉えにくいところをコツコツやること。




12月。今年も残りわずか。


美容室は1年で一番忙しい時期です。


現在3分の1ほど終え、ありがたいことに忙しく仕事をさせてもらっています。


これもすべてご支持くださるお客様と、頑張ってくれているスタッフみんなのおかげです。



久しぶりにやれる忘年会を楽しみにしつつ、今年の残りを、みんなと汗をかきながら乗り切っていきたいと思います。




関山